幻のワークショップ告別式
事務所に会社のスタッフを集めました。正確には元スタッフたち。
彼らは会社の業績が落ち込んで給与も払えない中、ギリギリまで協力してくれて、耐えきれずに出て行かざるを得なかった子たちで、ヤツのことを理解し尊敬してくれていた貴重な人材でした。
当初、お決まりのお別れの会、というような話もありましたが、その時は私は「ワークショップをしたい」と主張したのです。
様々なプロジェクトで「ワールドカフェ」をやりました。ワールドカフェは参加者の意見の発散と集約、そして何より参加当事者自らの気づきを促す方法として大変優れており、私たちも多くの成果を得たものでした。
ですから参列者代表が弔辞を読んで、シモジモは花を手向けて終わり、という会より、全員がヤツとの関係を思い出し、他者に分かち合えるこの方法でやりたい、と提案しました。
元よりヤツとのつながりの深かった複数の所謂「エラい人」達が弔辞を読む人としての私からの依頼を待っているような空気がありました。
そういうセンセイに表に出て頂いた方が、ヤツの箔もついたと思います。でも、それはヤツの本意じゃない。
スタッフ達は具体的に動こうとしました。会は東京と名古屋で二回、という計画も話されました。
東京バージョンでは会場のあたりもつけ始めていたとき、取締役のM氏から中止命令が入ったのです。
会社の清算が本決まりになり、資金の回収が出来なくなって求償権が発生する業者や債権者がたくさん出来る、と。そんな中で、社葬なんてとんでもない、ということになりました。
それで、ワールドカフェで行う前代未聞のお葬式、という案は消えてしまったのです。