お兄ちゃんから電話!?
ある日、ヤツのお兄さんから電話がかかって来ました。ヤツよりひと回り年上のお兄さんは戦中生まれで長男意識が強く、ワンマンな団塊の世代。私からすると舅以外の何もにでもない、という印象で怖くて近づけない存在でした。(嫁に行った時にはお父さんは既に他界されていましたので)老いらくの子で生まれたヤツですら家族会議に入れてもらえるようになったのは40を超えてからでしたから、まさに穢多→非人→まり、ぐらい存在を認めてもらっていませんでした。
でも、婆さんが亡くなり、ヤツが死んでしまえば、次男家族の代表は嫌がおうにも私です。散々悪口を聞かされてきたのでしょう。葬式の時にも、息子の学資を援助してもらってありがたかった、と言うと「あんたからは初めて感謝の言葉を聞いた」とイヤミを言われました。言うも言わぬも連絡する時はヤツとしか話さなかったくせに感謝の言葉をかける機会なぞあるものか、と思ったほどです。
その兄ちゃんが人として存在さえ認めていなかった弟の嫁に電話して伝えたこと。
「タクノリには金を貸しとるんだ。返してくれ」
唖然。
唖然でした。会社が潰れて借金が怒涛のように押し寄せてこようとしている義妹に、「金を返せ」です。
その当時、私は限定承認は相続放棄の一種だと思っていましたから、借財は返せない、欲しければ提訴するしかない、と答えたのです。
(実際にこの話を相談した会社顧問のN弁護士は個人の借財は返済されない、と答えました。これは間違いです)
兄ちゃんは納得しない。お前が手続きしてくれるのか、なんとかしろ、と食い下がる。
とにかく、やれるだけのことはやってみるから待っていてくれ、と言いなだめる。
電話を切って、しばらく天を仰ぐような気持ちでした。
死んだヤツが可哀想になりました。
キョーダイって、兄弟って?いったいなんなんでしょうーねー。