リークされた訃報。
明けて朝。
先ず、警察に行かねばなりませんでした。あの夜、事情聴取のお巡りさんは事故の発表では匿名にするかと訊ねて下さいました。とにかく、時間が欲しかったので「お願いします」と答えました。目の前でお巡りさんはその旨を伝えてくれました。
なのに、なのにですよ。
手続き中にヤツの弟子を名乗る元部下から電話が入る。「オガワさん、どうかしたんですか?」その言葉には既に事実を知らされている空気がある。え?何?何のこと?とボケてみても、はぐらかす余地がない。既に彼が一緒に働いた市役所の仲間内には情報が漏れていたらしい。どうやら、警察には番記者というのがいて、行政の裏側で密接につながっているらしいのです。
とにかく、それ以上広げないように頼んで電話を切りました。
遺族の気持ちなど全く慮りもせず、夕方には新聞とテレビで事件は報道されてしまいました。
考える時間も与えられない。選択した方策が周りにどのような影響を与えるかもまったく予測できないまま、どちらかを選べ、と迫られる。本当に壊れそうでした。
遺体が戻って来るのを待つ家は妙に静かでした。教会のメンバー達が片付けてくれた、がらんとした広間。とても現実のものとは思えない平和な、暑い夏の日。