底抜け脱線人生の歩き方

夫の突然の交通事故死。限定承認、会社の清算、失業、未払い賃金立替闘争、父の死、婿ウツ、etc. 底抜け脱線人生の顛末。

弁護士との面談(親分子分の二人組)

事情は複雑です。ヤツは友人たちとこの会社を立ち上げました。当初社長に据えた男は能力はあったにもかかわらず酷い喘息もちで、突然連絡不能になってしまうリスキーな人でした。仲間たちでその彼をなんとかするために作った会社でした。

高い家柄に生まれ、少し不思議な人で、結局、彼に仕事をしてもらうことを断念したヤツは、彼をオーナーに据え資金の調達にだけ頼るようになっていきました。設立当初集まっていた仲間はみんな逃げてしまいました。ヤツだけが、その彼を引き受けることになっていったのです。

経営には関わってくれないオーナー取締役会長と取締役社長のヤツ。どちらにも得なことはなく、何度も不毛な関係を終わらせて欲しい、と願いましたが、腐れ縁は続きました。

 

ヤツが死んでも、会社は存在する。登記上、代表取締役がもう一人いるから。でも、会長さんには会社を続ける気持ちもなく、調達した資金の為に担保に入っているマンションを売り飛ばすことだけが彼の「できること」でした。

実際に事務を仕切っていたのは取締役M氏。しかし、この人は前の会社でも何かやらかして自暴自棄になっていたところをヤツが招き入れた人。在籍していた5年間に業績らしいものを残さず、事務のパートさんが退職した後、やるべきバックオフィスの仕事を全くしていなかったということは後で知って驚きました。

バイリンガルで国際広報に長けている、と自分で言っていました。会社の金を使って忙しそうに飛び回り、飲み食いしていたようですが、どう思い出しても彼の持って来た仕事で潤った、という記憶が私にはありません。人事、財務、総務担当役員の彼が、事故が起きる直前には会社から逃げる準備をしていたようで、その事実を知ったヤツがオーナー会長にヘルプを求めていたメールが残っていました。かわいそうに、そのメールはオーナー会長さんには届いていなかったのです。届いていたらどうにかなっていたのかはもう想像もつきません。

 

そういうわけか、いきなり倒産!というのは混乱を招く、とオーナー会長とM取締役は判断したのでしょう。というか、そんな状況に二人とも対処できなかったのです。会社はこっそり任意清算の道を選んだようでした。

 

それで、弁護士に呼ばれました。

自分に直接関わりのある事で弁護士に会うのはたぶん、生まれて初めてだったんじゃないかと思います。

会社の弁護士は私のことも心配してくれる、と単純に甘く思っていました。

 

虎ノ門にある、その弁護士の事務所は大きくて立派なところ。親分子分の二人組の弁護士が私と向き合っていました。M取締役も同席していました。

弁護士が会社の状況をささっと説明して、言ったのは、「限定承認」という相続の方法でした。

ヤツの責任をそのまま受け継ぐのが単純承認、全ての権利と義務を放棄するのが相続放棄、じゃあ、限定承認とはなんぞや?

 

弁護士はサクサクと説明してくれたように思いましたが、きちんと理解出来ませんでした。ただ、今まで通りの場所に住み続ける為にはこの方法しかない、ということは分かりました。

 

それで、素直に、限定承認いたします、と応えたら、はい、次の話があるのであなたはここでお帰り下さい、とM氏を残して私は外に出されました。

 

その時は、何だか分からないけど、どうにかなる方法があるらしい、くらいにしか分かりませんでした。弁護士たちは淡々と話して行くので、それがどれほどのリスクがあり、大変な事であるかがさっぱり分かりませんでした。会社の顧問弁護士は私の面倒も見てくれるかなぁ?とそこはことない勘違いまでしていしました。

 

とにかく、良く調べもせず、専門家に相談もせず、簡単に限定承認、という腹が決まってしまっていました。

 

さーあ、でてきたぞ「限定承認」。こいつは呪いの言葉か福音か…?