底抜け脱線人生の歩き方

夫の突然の交通事故死。限定承認、会社の清算、失業、未払い賃金立替闘争、父の死、婿ウツ、etc. 底抜け脱線人生の顛末。

限定承認とは(解説)

限定承認、って何でしょう?

遺産相続の三つの方法のうちの一つなんですが、知らなくて当たり前です。全国で一年間に1000例あるかないか、の相続方法ですから。死んだ人間の数だけ「相続」は発生するわけですから、この数字がいかに少ないか、お分かりになるでしょうか?

現在、ファイナンシャルプランナー(2014年10月に取得)でもある私にはリアルにイメージできますが、弁護士でも知らない人がいたりするんですね。(実際にそういう弁護士に会いまして。それはまた後で書きますが)

 

遺産相続の方法は3パターンあります。

1.単純承認

これは被相続人の財産をすべて、相続人がそのまま受け継ぐ相続。財産はもとより、負債も全部です。ですから負債がたくさんあるなら、それも背負うことになります。無限責任の相続、とも言えます。もちろん、負債がなければありがたいことで、相続税の心配だけしていれば良いことになります。

2.相続放棄

被相続人の財産を相続する権利をすべて放棄することです。被相続人が莫大な負債を持ったまま亡くなった時はよく、行われます。この方法では、相続人は財産を受け継ぐことも、負債を背負うこともありません。債権者もまた、負債を回収することはできなくなり、プラスの財産はすべて国に納めます。もし、遺族が住んでいる家が被相続人の財産なら、そこから出ていかなければならなくなります。

3.限定承認

被相続人が選ぶことのできる第三の相続方法、これが限定承認です。限定承認は民法927-937条に定められています。

これは、簡単にいうと、被相続人の財産で債務を支払い、足らない分は放棄する、というやり方です。この方法であれば、債権者たちは被相続人の財産をそれぞれの債務の割合によって按分することで債権の一部の回収をすることができます。もし、財産が負債より大きければ、余った分は相続人が相続することができます。財産のプラスマイナスがわからない時にはこの方法なら相続人は負債を背負うことなく安全に相続することができます。でも、私たちは確実に負債の方が大きいのに、どうして「限定承認」を選んだのでしょうか?

 

その理由は以下の条文に答えがあるのです。

 

第932条

前3条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

 

これはどういうことかというと、ですね。現金以外の相続財産は売却してお金にしなければ配当に回すことができません。そのために「競売」にかける必要があるのですね。ところが、この932条では、相続人は裁判所の選任した鑑定人の評価で決まった額のお金を用意することができるなら、欲しい財産をそのお金と取り替えることができる、と言っているのです。それが「価格を弁済して、その競売を止める」ということなのです。

私たちはヤツが母親から相続した古い家に住んでいました。婆さんが心血注いで建てた家だったので、できたら、住み続けたかったのです。住み続けないと、通り過ぎていった人々の生きた証も消えてしまうような気がしました。

家の鑑定をして私たちがその金額を用意できれば、家を守ることができる、というなら、やってみようじゃないか、ということになったわけです。

ダメなら、息子と二人、家を処分して小さく暮らしていけば良いこと、と考えました。

 

限定承認は「死んだ人間の破産管財手続」みたいなもん。